Paris, France
サウンドトラックのショールをつくってくれている工場の人の出す展示会に一緒について、冬のパリ。
会場近くのアパートホテルに泊まって、まるでインドをそのまま持っていったような共同生活。朝からこってりインド料理。ひっきりなしにかけたりかかってくる電話、大声と怒声と笑い声。
奥さんはきゃぴきゃぴで「ベリーロマンテックパリス!」と連呼している。歩くのは超遅くて牛歩。街にサイクルリクシャーやオートリクシャーがないと嘆いてる。寝始めると常に変調する不思議なリズムのいびきが一晩中、それも心地よいBGMになってくる。
部屋の中はあたたかい。外は0度のパリ。
友達の展示会を見に行った帰りあてもなく歩いていると、偶然テロのあった場所に出くわして足が止まった。
凍結した悲劇の放つ放射能、ここで確かに何かが起こった。硝煙の匂いさえかいだ気がしたのだ。
人と人は時に絶望的にわかり合えない。抽象的、象徴的な何かを互いに憎み合っている。破壊、破壊、破壊。言葉だけがいつでもたやすく易しくて、それでも言葉に頼るしかなかったり。
闘争と絶望が底なしに拡大していく世界がある一方で、ポジティブで果てしなく、罪悪感のないspirituality
小さな街角のカフェのひさしとストーブのある表の席に、後ろの人と横の人とぶつかる距離で椅子をひいて座ってカフェクレームを頼む。インドの煙草を吸っている。
いろんな人種の人が、老若男女が、いろんな言葉で、いろんな匂いで、いろんな物を食べている。
そしてまた、偶然通りかかった教会の中の静謐。
ため息が出るほど厳かで精密なinterior。ステンドグラスからふりそそぐ、ほのかでやさしい光の綾。
路上では落書きが皮肉や愛を語り、やっぱりゴミ箱まで美しい。パリのマジック。
ホテルに帰れば、どこに行っていた、何をしていた、何を買った、何を食べたと尋ねられ、晩ご飯。
インド人の、いつでも自分のことを伝えようとする、そして人のことを知ろうとする意志と熱意。
何かと何か、ある出来事とある出来事のギャップにあぜんとしながら、悲しかったり笑えたりして、どんどんもっていかれる。